小さな小さな列島に3匹の兄弟仔ブタさんが住んでおりました。
サラリーマンの使い捨て歯車生活に嫌気のさした3匹の仔ブタさんは、
自分の大好きなお店を持つ事に決めました。
芸術家肌の長男、音楽仔ブタさんはCD屋さん。
インテリの次男、ゲーム仔ブタさんは最先端技術のゲーム屋さん。
物書きの好きな末っ子、出版仔ブタさんは本屋さん。
3匹の仔ブタの店は開店してから大人気で、
それはもう黙っていてもお客さんが入るほどの大盛況でした♪
その内、CD屋さんの音楽仔ブタさんがもっと儲けてやろうと思い
こう考えました。
「買う前に音楽聴いてしまったら、もう満足してしまって
ウチのCD買ってくれないんじゃないか?
そうだ、こんなにお客いるんだから、試しに聴いたり唄いたい人からも
お金を取ればウッハウハじゃん('▽'*)ニパッ♪」
音楽仔ブタさんはCDを買う人だけでなく、鼻歌で唄ってる人や
ただ聴いてるだけの人からもお金を取りはじめました。
すると、どうでしょう
音楽仔ブタさんのお店から、みるみる内にお客さんが減っていきました。
そしてお客さんは、この列島以外の店の曲ばかり買いはじめたのです。
これでは列島の音楽仔ブタさんは一切儲かりません。
それでも音楽仔ブタさんは自分の所のCDは安く売ろうと努力せず、
試聴金を取る事もやめず、自分の所が儲からないのは、
ヨソのCDを買うお客のせいだと思って妨害しようと企んでいます。
もう、このお店は潰れてしまうかもしれません・・・(汗)
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さて次男のゲーム仔ブタさんはその長男の堕ちぶれっぷりを
冷ややかな目でみながらゲームをじゃんじゃん売っていました。
並べる矢先に売れるほどだったので、
作れば売れると思ってガンガン並べていきました。
しかし、その中には急いで作ったために品質の悪い
クソゲーもいっぱいあったのです。
クソゲーを買ってしまったお客さんは、そのメーカーの作るゲームに
手を出すことはなくなりました。
そして運悪く高い金を払って何本もクソゲーを買ってしまったお客さんは
その次からお店に来なくなってしまいました。
発売日にわくわくして新作ソフト買いに来たら、当たり前のように延期で
がっくりして帰るお客さんも増えました。
そうやって信用を失いお客さんは減っていったのです。
そのうちゲーム仔ブタさんは、こう考えるようになりました。
「自分のとこの新作ソフトが売れないのは中古屋さんが
安く売ってるからだ!
お客さんが中古を買わなくなれば、
同じ本数の新作が売れるに違いないぞ!!」
そこで裁判をはじめました。
ゲーム仔ブタさんは裁判ゲームが得意なだけあって
中古屋さんはいっぱい閉店しました。
…でも、お客さんは減り続けました(´・ω・`)
大作ソフトばかりが売れ、中堅以下のソフトはなかなか売れなくなり
中堅メーカーがいっぱい倒産しました。
お客さんは過去の失敗から学び、クソゲーの可能性が少しでもある新作
には高い金を払ってまで冒険しようとはしない保守志向になっていて、
その時間と金を他に使いはじめたのです。
中小メーカーは安い中古で、ひとまず認知してもらい
クチコミヒットで大会社に成り上がれるという
ゲーム業界のドリームチャンスを、自ら潰してしまったのです。
でもゲーム仔ブタさんは賢いので、自分の間違いに気付きました。
そして、あわてて中古に許可を出したり新作を安くし始めました。
しかし、もう遅かった。
一度ゲームから離れてしまったお客さんは、他に楽しい事をみつけ
なかなか戻ってこなくなってしまっていたのです。
ゲーム屋さんは今もお客さんがジリジリと少なくなってきています。
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2匹の兄ブタは末っ子の本屋の様子も気になって覗きに行きました。
するとどうでしょう。本屋は今だにお客がいっぱいです。
2匹の兄ブタは末っ子に聴きました。
「なんでお前の店は技術的にも一番古くて時代遅れなのに
お客さんが減らないんだ? 何か良い儲け法があるのかい?」
末っ子は言いました。
「いや、何もしてないからお客さんは減らないんだよ」
2匹の兄ブタは到底納得できません。
すると、出版仔ブタさんは音楽仔ブタさんに淡々と話しはじめました。
「ボクの店をみてごらん。そこかしこに立ち読みしてる人がいるだろう。
確かに立ち読みするだけの人は本屋にとって迷惑なだけかもしれない。
本屋には1円だって得にはならないし、本だって傷むしね。
だけど、本を手には取ってくれる。
そうやって色々立ち読みしてる内に面白いと思う本に出会えば
立ち読みする人は、それを買ってくれるお客様に変わるんだ。
それにみてごらん。店はいつも人でいっぱいだろう?
人が沢山集まれば、店は盛況に見えて更にお客さんを呼び込むんだ。
大切な事は、 面白いかどうかもわからない物に
お客さんは1円だって払ってくれない って事なんだ(^^)」
音楽仔ブタさんは頭に金属の洗面器が落ちてきた時のような
ショックを受けました。
そしてゲーム仔ブタさんにも向き合い、こう言いました。
「ゲームだって同じだよ。
まずタダでもなんでも手に取ってもらわなけりゃ何も始まらない。
古本だって同人だって、新刊しか売らない本屋に何の得にもならない。
でも面白い同人を買えば原作がどんなのか気になるし、
古本の連載物のマンガや小説や雑誌を買うと、
その続きが気になって一刻も早く読みたくなるでしょう?
すると、お客さんが新刊発売日にウチへ買いにくるんだ。
そのお金は旧本を古本屋に売って作ったお金もあるんだよ。
お金はまわりまわって自分の所へ戻って来るものなんだ。
どこかでその流れを止めてしまったら、
それはいずれ自分へ跳ね返ってくるもんなんだよ(^^)」
ゲーム仔ブタさんも、アタリショックの時のような衝撃を受け
がっくりと膝をつく顔文字を打ちました orz
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さて、その後3匹の仔ブタさんたちはどうなったか
ちょっとのぞいてみましょう。
目先の利益よりも、そこに関わる商売全体の大きな流れを見る事を
身をもって教わった兄ブタさんたちは、ちっぽけなプライドを捨て
年下である弟の助言を素直に聴きいれ、潔く心を入れ替えて
店を盛り返しました。
この小さな小さな列島のお店は大繁盛して
いつまでもいつまでも好景気だったとさ。めでたしめでたし(^^)
※この物語のラストはフィクションです(汗)
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